公開質問状

クレスト法律事務所
弁護士 伊藤芳朗先生

2004年6月15日


「ホームオブハートとToshi問題を考える会」
代表  山本ゆかり

 当会は、ホームオブハート(旧レムリアアイランドレコード)とToshiに関する問題を明らかにし、被害の救済と防止を進める会です。その中心となる元セミナー生たちは、かつて共に過ごした他のセミナー生たちや、とりわけ子ども達にごくあたりまえの日常を取戻して欲しいと、体験した事実を勇気を持って公にする活動を進めてまいりました。
 栃木県県北児童相談所により一時保護された児童の母親ら3名および株式会社ホームオブハートの代理人として、6月3日付けで伊藤先生名義でインターネットおよびマスコミへのファックスなどを通じて発表されたコメント等に関しては、当会として多くの疑問と不審を感じざるを得ませんので、以下の通り質問させていただきます。


1 伊藤先生はカルト問題や子どもの問題に積極的に取り組まれてこられたと伺っていますが、今回、栃木県児童家庭課と県北児童相談所からホームオブハート関連施設での子ども達の養育環境が不適切であったと指摘されたことについて、どう考えておられますか。

2 今回なぜ不適切な養育環境と指摘されたのかについて、伊藤先生はどう認識しておられますか。何がどう不適切だったのか、児童の人権やカルト宗教問題に取り組んでこられたという伊藤先生のご見解をお聞かせください。

3 栃木県および県北児童相談所が虐待の有無について認定をしていないにもかかわらず、伊藤先生は虐待がなかったとの認定を栃木県および県北児童相談所から得たかの様に書かれていますが、栃木県児童家庭課および県北児童相談所による虐待の認定について、伊藤先生はいつどのように確認されたのでしょうか。

4 伊藤先生は、「形の上では児童福祉法第27条の措置とはいえ、実態としては、児童虐待疑惑報道が吹き荒れる中、県が正しく事実を見極めてくださり」と書かれていますが、栃木県は現実には適用要件が無いにもかかわらず児童福祉法第27条を適用したのだと主張しておられるのでしょうか。

5 日本弁護士連合会の「弁護士倫理」第一章、第七条には「弁護士は、勝敗にとらわれて真実の発見をゆるがせにしてはならない。」とあります。伊藤先生は、どれほどの時間をかけ、具体的にどのような調査をされた上で、ホームオブハートの実態について「見極め」られたのでしょうか。

6 「弁護士倫理」第一章、第一条には「弁護士は、その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現にあることを自覚し、その使命の達成に努める。」とあります。伊藤先生は6月10日にマスコミに公開された日本テレビ宛「通知書」の中で、不用意に一般市民である元トシオフィススタッフの女性とその子どもの名前が特定できるような表現をされましたが、それはこの「弁護士倫理」第一章、第一条にある使命にかなうものであるとお考えでしょうか。もしそうであるなら、どのようにかなうのか、ご説明ください。

7 栃木県警による捜査が現在も進行していることを承知する立場にありながら、「通告者らが刑事告発していた児童福祉法違反や監禁などの犯罪事実はなかったことが、本日の県の記者会見により明らかになったことと思います」と、県の児童家庭課や児童相談所による処遇発表に基づいて「犯罪事実は無かった」と断定的に書いておられますが、なぜ、県と児童相談所による処遇発表によって犯罪事実がなかったと断定できるのか、根拠をご説明ください。

8 伊藤先生は母親の代理人とのことですので、県や児童相談所が児童の処遇を決定するに至った経緯や背景を十分に承知される立場にあると理解しております。したがって、県や児童相談所が「不適切な養育環境」に子ども達を戻すことを避けるよう処遇を行った事実も、当然ご承知のものと理解しております。しかし、マスコミやインターネットで公開された文書のなかで、伊藤先生は、あたかも全く何の問題も無く子ども達が元の環境に帰ったかのごとく書いておられるようです。「弁護士倫理」第一章、第四条には「弁護士は、信義に従い、誠実かつ公正に職務を行う。」、同第五条には「弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、常に品位を高め教養を深めるように努める。」とあります。その観点から、弁護士名義でなぜそのような文章表現をし、それを公表されたのかご説明いただきたいと思います。

9 さらに、伊藤先生はマスコミおよびインターネットに公開された文書の中で、「今回のことは、会社やその関係者(母親らではありません)に対する私怨から、通告者らが針小棒大に描き立てた話」などとして、私や他の元セミナー生らが「私怨」から事実を曲げて子どもの人権を侵害するような人格の持ち主であるかのごとく表現され、私や他の元セミナー生の名誉を著しく毀損していますが、どのような根拠でそのような表現をしておられるのでしょうか。

10 「弁護士倫理」第四章、第四十三条には「弁護士は、相互に名誉と信義を重んじ、みだりに他の弁護士を誹ぼう中傷してはならない。」とありますが、上記10に関連して、児童相談所への通告者である紀藤正樹弁護士が、私や他の元セミナー生と共に、マスコミと事前に結託して人権侵害報道をさせたかのような表現をしておられます。伊藤先生はどのような理由や考えにより、そのような表現をされたのかご説明ください。

11 紀藤先生による県北児童相談所への通告や、元セミナー生らによる情報提供がなければ、子ども達の置かれた「不適切な養育環境」がそのまま継続していたであろうことについて、伊藤先生は子ども達の健全な養育という観点からどう認識し、どう考えておられるのですか。

12 そもそも、私はホームオブハートについて最初に霊感商法被害弁護士連絡会(以下「被害弁連」とする)に相談し、被害弁連からご紹介いただいて紀藤先生に相談したのですが、それにもかかわらず、同じ被害弁連で事務局までつとめておられる伊藤先生が当の相談事案に関して相手方を代理しておられるというのは、一市民の視点から見て大きな不審を感じざるを得ませんし、到底納得のいくものではありません。同じ被害弁連に所属する紀藤先生が、私や他の元セミナー生の事件を受任し、児童保護の観点からもホームオブハート問題に関わっておられる経緯を、伊藤先生は承知しておられたはずです。更に、伊藤先生は、被害弁連で紀藤先生が本件に関して報告する会議に出席し、紀藤先生が被害弁連に提出した本件関連の資料を入手できる立場におられながら、相手方を代理されるにあたって紀藤先生に何らの事前連絡もしておられません。伊藤先生から、どのような考えに基づいてそのような行動をとられたのか、ご説明ください。


 伊藤先生が、弁護士として依頼者の「正当な利益と権利を擁護するため、常に最善の弁護活動に努める」(「弁護士倫理」第一章、第九条)べく活動しようとされるのは理解しますが、それは、あくまでも「弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする。その使命達成のために、弁護士には職務の自由と独立が要請され、高度の自治が保障されている。弁護士は、その使命にふさわしい倫理を自覚し、自らの行動を規律する社会的責任を負う。よつて、ここに弁護士の職務に関する倫理を宣明する。」として定められた「弁護士倫理」の全体に基づいていることが大前提ではないでしょうか。その前提にのっとり、上記の質問に6月22日までに、書面にてお答えいただきますようお願い申し上げます。

以上

 

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